2017年11月に発足し、もうすぐ1周年を迎えようとしている、心地よい暮らしの文化圏をつくるコミュニティ「SUSONO」。もっとコミュニティを活性化させ、より楽しく、よりさまざまな人たちと繋がれるようにという想いを込めて、2018年9月に大幅なシステムアップデートを行いました!



今回のシステムアップデートで、SUSONOがどんな風に進化したのか? さらに、社会におけるコミュニティの役割や未来はどうなっていくのか? 



SUSONOのシステム「OSIRO」を手がけるオシロ株式会社 代表の杉山博一さんに、佐々木俊尚さんがインタビューを行ってきました。


 

<プロフィール>

杉山博一(すぎやまひろかず)

オシロ株式会社 代表取締役社長


1973年赤坂生まれ。元アーティスト&デザイナー。一度も就職したことがないのに2006年日本初の金融サービスを起業。その後ニュージーランドと東京の二拠点居住を経て、日本をアーティストが食べていける国にするために、OSIROを開発。2017年オシロ株式会社として法人化。


URL: https://osiro.it/

Instagram:https://www.instagram.com/sghz/

Twitter:@sghz



「共感を熱量に変える仕組みを作る」(杉山)



佐々木(以下、佐):SUSONOのシステムまわりで、日頃より大変お世話になっています。



杉山(以下、杉):こちらこそいつもありがとうございます。僕、システム運営とか関係なしに、素でSUSONOを楽しんじゃってます(笑)。SUSONOのボードゲーム部に参加しているんですけど、みんなイイ人で本当に楽しくて。



佐:それは嬉しいですね。そんなSUSONOをより良いコミュニティにするために、今回、杉山さんにシステムのアップデートをお願いしたわけですが、結構変わりましたよね。



杉:はい、SUSONOのアップデートに使用したシステム「OSIRO 2.0バージョン」のテーマは、“「共感」を「熱量」へ”です。共感し合える人たちの共感度を、熱量に変えていくことができる仕組みを念頭において開発しました。



佐:とても興味深いテーマですね。具体的にSUSONOでは、どのようにシステムが変わったのでしょうか。



杉:SUSONOにおけるシステムの改良点は、大きく3つです。まず1つ目に、コメントは「チャット」をメインにしました。2つ目に、もっと直感的なユーザーインターフェースにするためにUIをスムーズに。そして3つ目に、トップページから行きたいコンテンツまでの階層を浅くすることに。



佐:待ちに待った「チャット」機能が実装されたんですね。



杉:はい。今はみんなメッセンジャーを中心としたフローのコミュニケーションに慣れているので、その部分を充実させることで、より良いコミュニケーションを生み出すことができます。もちろん、フローのコミュニケーションだけではなく、フローとストックの両方をうまく融合していきます。



 

佐:フローとストックの情報を融合することは、UI的に可能なんですね。



杉:可能です。ストックの情報を投稿する「ノート」という機能(これまでのトピック)があるんですが、チャット上に投稿されたことが表示されますので、基本的にはチャットを見ているだけで、すべての情報にアクセスができるようになります。



佐:「ノート」というのは、どういう機能なんですか?



杉:「ノート」というのは、お知らせや記事などのストック情報を投稿する機能です。ページの一番上に、みんなに見て欲しい情報が「ノート」として固定されるので、パブリックな情報はここで閲覧してもらうことになります。




さらに、今までは「イベント」にアクセスすると、すべてのイベントが一覧で表示されたんですけど、自分の参加している部活動のイベントだけを見られるようになりました。あとは通知も2種類になりました。全体を通したものと、自分にメンションされたもの。これは、実際に使っているメンバーからの要望が多かった部分ですね。



佐:自己紹介ページも、結構変わりましたよね?





杉:はい、もっと自分を知ってもらうことができるような仕様に変更しました。アイコンに加えてカバー画像が交換できたり、自分のキャッチコピーを入れることができたり。



佐:なるほど。このプロフィールがあれば、自分と価値観の近い人をスムーズに見つけることができて、さらに交流が活性化しそうですね。



杉:さらにプロフィールページにもチャット機能が付きます。(近日リリース予定)それは「土間」を想定したんですけど。



佐:玄関まで行って、土間に腰掛けて、家の人と喋っている感じですね。



杉:そうです、そうです。プロフィールにチャットがついていれば、自転車が趣味ですって自己紹介している人に、「僕、ロードバイクに乗っているんですけど、どんなバイクに乗るんですか」など、気軽に話しかけることができるじゃないですか。



佐:チャットのコミュニケーションって、立ち話に通じるものがありますよね。スレッド型のコミュニケーションだと、「きちんと話さないと」と思ってしまうんだけど、チャットなら宛名や署名もいらないし、返事をしておくだけでOKですし。不動産の問い合わせとか再配達の受付とか、世の中がどんどんチャット化されているじゃないですか。未来のコミュニケーションは、そういう方向にいくんだろうなと思っています。



「同じ価値観の経済圏を持つことが人生を豊かにしてくれる」(杉山)



杉:さらにコミュニティの中で、いいねやコメントをしたりするとポイントが付与されるというシステムも導入しました。



佐:たくさん書き込んだり、いいねをするなどのコミュニケーションを重ねると、ポイントが貯まっていくということですか。



杉:そうです。あとは、イベントを立てたり、参加することでも、貯まるようにします。ポイント自体はリアルの世界では使えないんですけど、すでに実装しているコミュニティではみんな楽しんで貯めてくれています。


面白いのがコミュニティごとにポイント名がありまして。オシロ共同代表でもある四角大輔のコミュニティ「LifestyleDesign.Camp」では「マナ(マオリ語で徳を意味する言葉)」ってネーミングをつけていて、徳って、貯まるだけで何か嬉しいものですよね(笑)。



佐:確かに(笑)。それは、面白いですね。



杉:将来的には、ポイントを譲渡できるようにしようと思っています。そうすれば、コミュニティの中に経済圏ができる。もともとOSIROという名前には、一国一城の主になってもらいたいという想いがあるのですが、ポイントができる前って「一城」の部分しかカバーできていなかった。でも経済圏ができれば、「一国」になるじゃないですか。これでやっと、OSIROの名に恥じないシステムが完成することになります(笑)。



佐:コミュニティの中でしか価値がないポイントが成り立つのは、共通の文化感や価値観がベースにちゃんとあるからですよね。



杉:そうですね。このシステムを通して、同じ価値観を持った人たちと横に繋がった経済圏を持つことが、人生を豊かにしてくれるのではないかと考えています。



佐:あとは、その経済圏をいかに活発化するかというのも大切だと思うんですが、ポイント導入後、コミュニケーションはどのように変わっていますか?



杉:他のコミュニティでのテスト導入の数字を見ると、コミュニケーションの活発度は1.5倍〜2.5倍になっています。KPI的にいうと、このシステムは「熱量」というのを測定できる、唯一の仕組みになると思います。コミュニケーションの総量+会員数で、そのコミュニティの熱量が出て、すべてのコミュニティをその熱量で比較できるようになるんです。



佐:熱量を計測できるってすごいですね。1.5倍〜2.5倍コミュニケーションが活発になるというのは、結構良い数字なのではないでしょうか。



杉:良い反応だと思います。そうやって、熱量を引き出し、さらに測ることができるのがOSIROの一番の強みです。



佐:オウンドメディアが測るいわゆる「エンゲージメント数値」って、SNS上でシェアが何回されたか、いいねが何回押されたか、それでインプレッションがどれだけあるか、その数値を総合しているだけにすぎない。


果たしてあれで、本当のエンゲージメントを測れているのかという疑問がありますよね。あれって、開かれたSNSの世界だから使いにくいわけで、クローズドな文化圏の中で測る方が正確に測れる可能性があると思うんです。



杉:そう思いますね。毎週、外部の有識者も含めて「発明会議」というのをやっているんですが、その会議でこのシステムをさらに活用できないか話し合っています。



「未来型コミュニティに広場はなくていい」(佐々木)



佐:コミュニティってしばらく運営していると、どうしてもメンバーが常連化してしまいますよね。新しい人が入りづらい、馴染みづらいということが起こる。新しく入ってきた人がすぐに馴染みやすくするための施策ってあるんでしょうか。



杉:そうなんですよね、新しくコミュニティに入ると交流しづらかったりしますよね。なので、メンター機能を導入しようと考えています。新しく入ってきた人をサポートしてもいいよっていう既存メンバーが、初めてコミュニティに入ってきてどうしていいか分からない人に、ルールや振る舞いを教えてあげられたらいいなと。



佐:なるほど、それは良いかもしれませんね。神輿とかも、そういう仕組みですよね。「今日から担がせてくれ!」と行って、いきなり担げるわけじゃない。紹介者を通じて周りに紹介してもらって、初めて担がせてもらえるんです。



杉:はい、僕もこれは祭りと同じだと思っていて。地域の祭りって、いちいち田中さん家、山田さん家…と一軒一軒回って、祭りの方法を聞きに行かないと、でき上がらないじゃないですか。効率化をあえてせず、面倒臭い工程を重ねてコミュニケーションを行うことで、コミュニティが成り立つという。人に教えることって本当に面倒なんですけど、その教えた関係性によって、より仲良くなれる。僕自身、20年前にアルバイトをしていた時にメンターだった人と、今でも友達だったりします。



佐:人間関係は網の目になっている方が、共同体が円滑に運営されやすいんじゃないかと、最近考えているんですよ。



例えば、地方は堅固な古い共同体があるわけですが、そこで真正面から共同体に向き合うとひたすら面倒臭い。町内会に入って、町内会の人全員の意見を伺わなきゃいけないとか…。そうじゃなくて、町内会で親切な人を見つけて、その人とだけ仲良くする。そうすると、その親切な人が町内会の別の人を紹介する、そしてその人がまた別の人に紹介する…と芋づる式にいろんな人と繋がることができる。気がつくと地域の共同体に参加していて、全員知り合いみたいな感じになる。



それって、広場型の共同体じゃなくて、網の目型の共同体なんですよね。広場型の共同体は、中心にいる権力を持っている人と、その周辺にいる人のヒエラルキーができちゃう。そのヒエラルキーを作らないために、広場はない方がいいと思うんです。



今の時代のSNS、FacebookやTwitterは「広場」がないですよね。そこには、中心がないという気持ち良さがあるんじゃないかな。SUSONOにメンター制度を作るのは、共同体の新しい流れに沿っている感じがして、すごく面白いなって思いました。



「良いコミュニティに属することが幸せのカギ」(杉山)


 


杉:実際に参加していても思うんですが、SUSONOは年齢層もいろんな職種も関係なしに仲良くなれる、とても不思議なコミュニティですよね。



佐:会員同士の部活動が、かなり活発ですよね。OSIROのシステムを使うことで、ワーッと盛り上がるようになった。そのトリガーは一体なんだったんですかね。



杉: 「1対n対n」がうまく活性化したことにあると思います。今までのコミュニティ、例えばファンクラブのコミュニケーションって、「1対n」という一方通行の関係性だったんです。でも、1人でご飯を食べるより、自分の大好きな人とご飯を食べた方が絶対に楽しいですよね。コンテンツも同じで、好きな作家の本を気の合う人たちと語り合うとか、自分の好きなアーティストのライブに気の合う人たちと集まって行く、「n対n」が大事だと思うんです。「1対n対n」の活発化は、最初から念頭においてシステムを設計しました。



佐:「1対n対n」を活性化させよう、とどうして思ったんですか?



杉:僕はもともとアーティストになりたくて、20代の頃ずっとアート活動をしていたんです。アートだけではなかなか食べていけなくて、フリーでデザインをやりながら続けて、30歳を機にやめたんですよ。その経験から、アーティスト活動を続けていくにはお金と応援してくれる人が絶対的に必要だ、と痛感しました。「1対n対n」ができないと、そこには応援団もメンターもいなくて、盛り上げることができない。そこからOSIROの「1対n対n」を大切にしようという発想は生まれました。



佐:なるほど、そうだったんですね。



杉:ハーバード大学の研究で、人間が「幸せ」と感じることに、良いコミュニティに属していたかどうか、が一番の要因になるという結果が出たらしいですよ。お金でも名声でもなく、良いコミュニティに属せたか、が大事なんです。



佐:良い環境に身を置くことって大事だよね。SUSONOのようなゆるやかな共同体って、人間関係が網の目のようになっていて、中心にまったく圧力がない。あちこちにいろいろなことを好きな人たちが集まって、それぞれ飲みに行ったりパーティーをやったり。OSIROで形づくるコミュニティは、誰かや何かを排除せず、かといって同調圧力に固まりすぎない。未来型コミュニティの一つの可能性を示しているんじゃないかと思っています。



杉:そう言っていただけると、嬉しいですね。より良い未来、社会へ繋がっていくようなコミュニティを作れるように、これからも頑張りたいと思います。